「コミュニケーション能力」を高めよう!

 「教養」をテーマとした前回の最後の方で「民間人と自衛隊以外の話題で話がはずむか」「民間人を惹きつける話題を持っているか」を問うたが、いくら話題を持っていても「コミュニケーション能力」が高くないと話が弾まないのは明らかだろう。
 翻って、退職自衛官のセカンドライフを考えると、再就職先で「国防や自衛官へ理解最優先」とはほぼ期待できず、ドラマのような展開にはならないだろうとの思いが余計に強まった。
 最近、ビジネス界でもメールやSNSの発達、テレワークの拡大など雇用環境の変化に加え、特に若い世代の人間関係の希薄化から、社内のコミュニケーション不足が業務の阻害になるケースが発生し、「コミュニケーション能力」の重要性に関心が集まっている。

「コミュニケーション能力」は普段の隊務で高められる

 「コミュニケーション」とは、「自分の意志や感情を言語などの手段を使って相手に伝え、相手からの良い反応や良い結果を期待する諸行動」と定義され、命令や指示などの一方通行と違って、伝達する側と受け取る側が互いに関心を持ち合い、理解力に大きな差がないことが求められている。
 自衛隊においては、命令や指示で部下を動かす機会が多いが、部下とのコミュニケーションを良くすることも普段から重視されている。そのためには、上司は部下とひんぱんに接触し、風通しを良くし、お互いの親和的な人間関係を築くことなどに加え、リーダーとして部下から尊敬され、信頼されているかどうかも重要になってくる。
 実は、「コミュニケーション能力」を高めるために普段の隊務において心がけて実践することと、退職後に民間人とコミュニケーションを深めるコツはほぼ同じである。人とのコミュニケーションがあまり得意でない自衛官諸氏もいるだろうが、「コミュニケーション能力は退職後も重要なスキルである」ことを再認識し、普段からそのスキルアップに努めてもらいたいものである。

「聞き手上手」が信頼を広げる

 そのコツをもう少し具体化すると、階級社会の自衛隊は、階級の上の者が多少尊大であっても部下が忖度する場合が多い。だが、民間人との交流はそうはいかず、「聞き手上手」の方が「気さくな人」と受け止められ、信頼され、早く溶け込むことが出来る。
 「聞き手上手」のコツは、「相槌(あいづち)」を打つなど相手(部下)の言い分に耳を傾ける積極的傾聴法を身につけることである。例えば、「それで、それからどうした?」「それは面白い」「○○はどう思う、○○ならどうする?」「○○ならできるぞ」「何かわたしにできることはないかね」を多用し、部下の能力や関心を引き出すことを心がけ、実践することだ。
 退職後は、それぞれの「相槌」を、「それは面白ですね」「何か私にできることはないですか」など「ですます調」に改めるだけ十分なのである。
 あえて付け加えれば、「コミュニケーション能力」は、その人の「人柄」とか「人間性」がベースになっている。これらの定義自体も難しいが、「ユーモア」とか「柔らかな性格」などは「相手に好感をもたらす武器」にもなる。一方、この逆の「人間性」が瞬時に出てしまう場合もあるのが世の常だ。
 本シリーズではすでに様々なことを取り上げたが、「人は、己の『人間性』を高めるために一生努力する存在」とも言えるのではあるまいか。普段から心がけて努力すべし!