「趣味」が自分の『未来』を創る

ドラマ「オールドルーキー」

 元サッカー日本代表の引退後のセカンドキャリアをドラマ化した「オールドルーキー」が始まった(TBS、毎週日曜日午後9時放映)。
 6月末時点でまだ1話だけだが、主人公は、37年間、サッカーに打ち込み、サッカー以外に何も知らないまま社会人デビューしてドン底を味わった。だがそれも束の間、アスリートの経験が徐々に頭角を現していく。毎回、様々なドラマが展開され、最後はハピーエンドに終わる物語であると予測する
 何気なくこのドラマを観ているうちに、主人公の姿が、30数年間の人生を国防に捧げ、定年退職後、右も左もわからないまま社会人デビューする多くの自衛官と被った。同時に、自衛官達もドラマのようにそれまでの経験が活かされ、退職後の人生がハピーになるだろうかと考え込んでしまった。

「趣味」を持たない自衛官

 毎回の業務管理教育の経験から、「資格」を持っている自衛官が少ないことについてはすでに触れたが、調査をすると、意外にも「趣味」を持っている自衛官もごくわずかだ。これらの現状を知ると、「自衛隊の人材育成は間違っていたのではないだろうか」とOBの一人として自責の念さえ沸いてくる。
 確かに、自衛官の経験や資質を活かして「オールドルーキー」としてデビューし、充実したセカンドそしてサードキャリアを積む元自衛官が存在するのは事実である。しかし、元自衛官の多くは、退職後に階級を外してしばらく過ぎた頃、本当の「自分」を知り、やがて職探しに奔走し、悩み、戸惑い、反省することだろう。本シリーズでも繰り返し述べてきたが、「その時では遅い」のである

「成長」は時間を忘れて熱中する時に

 業務管理教育では、「人生100年時代」を生き延びるため、「資格やスキルの取得」以外、「意識改革」や「見識の再構築」を強調している。世間に通じる魅力的な「オールドルーキー」に一朝一夕でなれる者など一人としていないのであり、魅力や人間性などと言われるものは、意識の継続と努力の量に比例すると考えるからだ。
 退職までまだ年数がある自衛官達には、忙しい勤務の中にあっても、日々、自衛隊以外の様々な事に関心を持ち、見聞し、蓄積することを勧めたいが、中でも、様々なことにチェレンジできるような「趣味」を持ってもらいたいものだ。「趣味」には、ことさら意識しなくとも、また楽しみながら努力を継続できるという効用がある
 そして、自衛官以外の仲間をつくり、広く交流してほしい。最近はSNSの発達により仲間は時空を超える。そのような日常の繰り返しの中で、話題も豊富になり、コミュニケーション能力も向上し、人間性も豊かになる。「趣味」を通じて、貴重な人脈が出来たり、退職後に民間人と話がはずみ、相手を惹きつける手段にもなる。
 「人生に無駄なことはひとつもない」といわれるが、「趣味」はその典型であり、「趣味が自分の『未来』を創る」と言って過言でないのである。
 「人生100年時代」、平均3万日あまりである。「趣味」のように、時間を忘れて熱中する時こそが自らの成長に繋がる価値ある時間でもある。若い時から〝熱い時間〟を増やすことが心がけて実践してもらいたいものだ。