幸福な「人生の後半」を全うしよう!

シリーズを終了するにあたり

「『人生100年時代』を我が事として考えよう」との見出しで、「定年後も〝長い〟人生は続く!」ことを強調して始まった本シリーズも今回で19回を数え、いよいよ最終回となった。

自衛官は益々忙しくなる

 昨年末、画期的な「戦略3文書」が策定された。それだけ国際環境や周辺情勢が緊迫している証拠でもあり、自衛隊に課せられた役割と国民の期待が増大し、自衛官は緊張感をもって隊務に従事することが求められるだろう。よって、現役の間に第2の人生に向けて諸準備することなどが益々難しくなってくる可能性もあるだろう。
 一方、少子高齢化が一層進展し、生産年齢層の減少から、70歳ぐらいまで働くことを前提に高齢者雇用のニーズは今後増大するだろう。しかし、そのことは、働く意欲と能力がある高齢者が年齢に関係なく(好条件の)仕事を得る「エイジフリー社会」が到来することを意味するのであって、脇目を振らずに自衛官一筋に生きてきた退職自衛官が希望通りの職を得て、安泰な「人生の後半」を送ることが保障されているというわけではないだろう。
 つまり、自衛官は、自衛官として職務を全うしつつ、退職後の〝長い〟人生のために必要な準備をするという「二兎を追う」ことを余儀なくされ、益々忙しくなるに違いないのである。

「人生の後半」は〝自走人生〟

 第2・第3の人生に向けて、最小限「何をすればよいか」について、不十分ながらも本シリーズで紹介してきた。
 さて、「100年時代」の人生をマラソンに例えれば、定年退職は「折り返し点」を過ぎたあたりであろう。
 これまでの往路はコース設定や走り方などすべてを自衛隊が管理し、ただひたすら走ればよかったものが、これからの復路は、コースの設定も、走り方も、障害の排除までもすべて自分で計画して行動する〝自走人生〟を走らなければならないのである。
 当然ながら、人生のコース設定はひとり一人違うし、参考にするモデルさえ見つからない場合もあるだろう。その上、ライバルは転職を繰り返し、経験豊富な世の中の同世代だ。
 それでも、自分の「人生の後半」を思い描き、何らかの準備をする者は救われるだろう。逆に、準備を怠ったまま定年を迎え、世に放り出された場合に感じるカルチャーショックは想像以上に大きいものがあろう。50代後半は心と体が曲がり角に差しかかる年代でもあり、最悪、「定年(燃え尽き)症候群」に陥る場合もあるのだ。
 頑張ってこれを乗り超え、再就職期間を無事終えたとしても、60歳前半から中頃、再び「職探し」を余儀なくされる。今度は「自己開拓」しかなく、何も準備していなければ選択肢は益々狭くなることは必定なのである。

「最後の任務」が待っている

 国防に人生の半生を捧げた自衛官が退職後も〝例外なく〟幸福な「人生の後半」を全うすることは、「最後の任務」であると考えてほしい。それは本人や家族のためだけではない。そのような姿が全国各地にロールモデルとして存在すれば、自衛官を目指す若者の募集の拡大に寄与することが期待でき、そのことが我が国の未来の安寧にも繋がると思うからである。
 繰り返すが、このような「最後の任務」を完遂できるかどうかは、現役時代からの心構えと準備にかかっている。
自衛官にとっての「人生100年時代」は、単に〝生き永らえれば良い〟というものではないだろう。全自衛官が「人生の後半」、「最後の任務」を全うし、「幸福な一生だった」と振り返ることができるような人生を送ってほしいと切に願いつつ、本シリーズを終了する。 頑張れ、自衛官!

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 長い間ご愛読ありがとうございました。本シリーズは、1回から16回までと19回は宗像久男、17回は山形克己、18回は楠本裕幸が担当しました。