第2 退職直後の貴方はどんな職業訓練が選べるか

 

その1 退職直後の皆さんが選べる職業訓練

 

これからの説明は、「始めに」でお示しした「① 現役自衛官であり、これから退職して再就職する。」という方を対象とした説明になります

自衛官が退職直後に利用できる公的職業訓練は、原則として「求職者支援訓練」です。
その理由は、退職直後の自衛官には雇用保険の受給資格がないので、「雇用保険の失業給付を受けられない人を対象」とする求職者支援訓練を選ぶことになります。これは主に民間企業が委託され実施している職業訓練であり、基本的に無料で受講することができます。

求職者支援訓練の中に希望するコースが無い場合、制度の枠組みを超えて公共職業訓練のコースの中から選択することもできます。

 

その2 求職者支援訓練とは

 

求職者支援訓練とは「求職者支援制度」に基づいて実施される職業訓練です。

そもそも公的職業訓練はもともと雇用保険制度を原資として公共職業訓練から始まったものですが、様々な要因による厳しい雇用情勢を受け平成23年に「求職者支援制度」が制度化され、求職者支援訓練が開始されました。そこで、まずこの制度について少し詳しく説明します。

 

1 求職者支援制度とは(※1)

 

求職者支援制度の概要は、下表のようなものです。

◯雇用保険を受給できない求職者が、月10万円の生活支援の給付金(職業訓練受講給付金)を受給しながら、無料の職業訓練を受講し、再就職や転職を目指す制度

◯雇用保険と生活保護の間をつなぐ第2のセーフティネットとして、離職して収入がない者を主な対象としているが、収入が一定額以下の場合は、在職中に給付金を受給しながら、訓練を受講できる。

◯支給要件を満たさず給付金を受給できない場合であっても、無料の職業訓練を受講できる。

 

2 制度活用の要件

 

この制度を活用するにあたっては、以下の「訓練受講の要件」が必要となります。

◯ハローワークに求職の申し込みをしていること。

◯雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと。

◯労働の意思と能力があること。

◯職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワークが認めたこと。

 

3 給付金の支給要件

 

この制度により職業訓練給付金を受給するためには、上記「訓練受講の要件」に加え、以下の「要件」に適合することが必要となります。

◯本人収入が月8万円以下

◯世帯全体の収入が月25万円以下

◯世帯全体の金融資産が300万円以下

◯現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない。

◯全ての訓練実施日に出席している。(やむを得ない理由がある場合でも、8割以上の出席率がある。)

◯世帯の中で同時にこの給付金を受給して訓練を受けている者がいない。

◯過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けたことがない。

 

4 訓練の対象者

 

この訓練の対象者は、上記の給付金支給要件に適合して「給付金を受けて訓練を受講する者」と、要件に適合しないため「給付金を受けずに訓練を受講する者」とがあります。

また、この訓練は、下表にあるように一定の条件の下に「離職者」のみならず「在職者」も訓練を受けることができます。

給付金を受けて訓練を受講する者
離職者 雇用保険の適用がなかった離職者
フリーランス・自営業を廃業した者
雇用保険の受給が終了した者
在職者 一定額以下の収入のパートタイムで働きながら、正社員への転職を目指す者
給付金を受けずに訓練を受講する者(無料の訓練のみ受講する者)
離職者 親や配偶者と同居していて一定の世帯収入がある者など(親と同居している学卒未就職の者など)
在職者 働いていて一定の収入のある方など(フリーランスで働きながら、正社員への転職を目指す者など)

 

5 職業訓練受講給付金の支給額

 

給付金の支給要件に合致した場合、以下の給付金が支給されます。

訓練受講手当

月10万円

※ 訓練開始日から1か月ごとに区切った期間の日数が28日未満の場合、1日当たり3,580円

通所手当 訓練施設へ通所する場合の定期乗車券などの額(月上限42,500 円)
寄宿手当

月10,700円

 ※ 同居の配偶者、子および父母と別居して寄宿する場合などに支給

 

6 求職者支援制度の対象となる職業訓練

 

この制度における訓練は、各都道府県が民間教育訓練機関に委託して以下のように行われ、訓練の種類は下表のように設定されています。

◯民間教育訓練機関が実施する就職に資する訓練を求職者支援訓練として認定

◯求職者支援訓練は、地域の求人ニーズを踏まえ都道府県ごとに策定された「地域職業訓練実施計画」に基づき認定

◯訓練受講者が希望する場合、給付金を受給しながら公共職業訓練など(※)を受講することができる。

※公共職業訓練は、主に雇用保険受給者を対象とする訓練であり、一方、求職者支援訓練は主に雇用保険を受給できない者を対象とする訓練である。
雇用保険受給者は、希望する場合に求職者支援訓練を受講できるが、雇用保険を受給できない者の受講が優先される。
公共職業訓練の期間は、3ヶ月から2年

求職者支援訓練の種類】

基礎コース 訓練内容 社会人としての基礎的能力および短時間で修得できる技能などを付与する訓練
訓練期間 2ヶ月から4ヶ月
訓練分野 ビジネスパソコン基礎科、オフィスワーク基礎科など
実践コース 訓練内容 職務遂行のための実践的な技能などを付与する訓練
訓練期間 3ヶ月から6ヶ月(就職に直結する資格を修得できる介護分野などは2ヶ月から)
訓練分野 IT WEBアプリ開発科、Android/JAVAプログラマ育成科など
営業・販売・事務 OA経理事務科、営業販売科など
医療事務 医療・介護事務科、調剤事務科など
介護福祉 介護職員事務者研修科、保育スタッフ育成科など
デザイン 広告・DTPクリエーター科、WEBデザイナー科など
その他 3次元CAD活用科、ネイリスト養成科など

 

その3 求職者支援訓練に至る経路は

 

1 退職前にしておくこと

 

皆さんが退職後に、就職援護を受けて再就職するか職業訓練に進んだ後に再就職するかに拘わらず、まず自分が何をやりたいかを確立することが極めて重要です。これが固まらないと自分の進むべき方向(仕事にしても、職業訓練にしても)が定まりません。

自分が何をやりたいか・・・は簡単には決まらないのが普通ですから、現職の間に時間をかけて見定めてください。その気があれば機会は沢山あります。職業能力開発集合訓練、業務管理教育、通信教育、技能訓練、再就職支援施策での職業訓練、その他。もう退職までに間もない人でも援護担当者のアドバイスを聞くことはできます。退職を迎えるまでに「何をしたいのか」を明確に定めておくことをお勧めします。

 

2 どのような訓練があるのか

 

将来自分のやりたいことが確立し、新たな知識・技術を身に付け、再就職に役立てられる能力を習得するためにはどのような職業訓練があるのか。具体的に見てみましょう。

東京都の例で見てみますと、平成3年度の訓練は、「平成3年度の訓練実施スケジュール」(※2)にあるとおり毎月多くの訓練が設定されており、毎月多くの入校生を募集しています。
例えば、令和3年4月入校生の募集状況(※3)は、「義肢装具科(1年間の訓練)」:定員20名、応募者19名、「介護福祉士養成科(同2年)」:定員197名、応募者96名、「保育士養成科(同2年)」:定員422名、応募者326名、「専門人材育成訓練(同1年)」:定員293名、応募者439名、「東京都民間委託訓練(同6か月)」:定員510名、応募者504名となっており、年間を通じてそれなりの応募者がいるようです。
これらは、民間の教育機関に委託されている求職者向けの職業訓練であり、皆さんが希望すれば受講が可能となる訓練です。

 

3 求職者支援訓練受講への流れ

 

(1)ここからは訓練を受講するまでの流れについて説明します。
公的職業訓練を受講するためには、基本的にすべてハローワークを通じて行うことになります。

(2)受講するためには、ハローワークに求職申し込みをした後、職業訓練を実施する施設等が行う面接等の選考に合格し、ハローワークにおいて受講あっせんを受ける必要があります。

なお、受講あっせんは、ハローワークでの職業相談を通じて❶訓練を受講することが適職に就くために必要であると認められ、かつ、❷訓練を受けるために必要な能力等を有するとハローワークが判断した者に対して行います。「ハロートレーニングの流れ」(※4)

(3)少し具体的に説明しましょう。
東京労働局のホームページで紹介されている「求職者支援訓練 募集中・募集予定のコース情報」(※5)に、受講に至る流れが載っており、これを例に説明します。
なお、例で掲載されている「募集中・募集予定のコース」は時期が来れば逐次に更新されますので、上記「求職者支援訓練 募集中・募集予定のコース情報」「訓練の種類」の下に示される「令和〇年〇月〇日開講コース」「◇コース情報」…「ダイジェスト版」をクリックすれば、その時点でのコース情報を確認することができます。

【受講に至る流れ】(項目の赤書きはハローワーク、黒書きは訓練施設)

① ハローワークに行き相談を受ける

◯自分の居住地を管轄するハローワークに行き相談します。就職を希望している職種に役立つ職業訓練はどういったものなのかを教えてもらいましょう。
◯ハローワーク内の行き先は、「職業訓練窓口」です。
◯東京都の例で毎月訓練が設定され募集があるように、地域によって、また、相談のタイミングによって受講できる訓練が変わってくるので、自分に合う訓練をしっかり確認します。
◯ハローワークには、現職時(つまり退職する前)に行っても良いです。希望する訓練が開始される時点で無職の状態であれば、その訓練を受けることができます。

② 訓練施設(訓練実施校)とコースを選択する

ハローワークで受ける説明やパンフレット(そのコースのパンフレットを貰えます。)などを確認しながら、自分が実際にどのコースを受けたいのか絞っていきます。迷ったときはハローワークの担当者に相談してください。

③ 訓練施設が実施する施設見学会に参加する

◯ハローワークで絞った訓練施設に直接電話して、「施設見学会」に予約を入れ、参加します。施設見学会の実施日はパンフレットに記述されていますので、日時が重ならなければ、複数の訓練施設の見学会に参加することが可能です。
◯見学会への参加は、訓練施設の担当者にやる気をアピールできたり、また雰囲気などを知るチャンスになります。

④ 申し込みの事前相談する

◯居住地を管轄するハローワークで「受講申込書」、「受講申込・事前審査書」、「求職者支援訓練応募相談票」を受け取ります。
◯「職業訓練受講給付金(10万円/月)」を希望する方は、その要件や手続きについて説明を求めてください。
◯受講申込手続きには複数回の相談が必要だと言われています。また募集締切直前には窓口が混雑するので、余裕をもって相談に臨んでください。

⑤ 受講を申込む

◯求職者支援訓練の申込みには、事前相談で受け取った書類に必要事項を記入し、併せて証明写真(縦4㎝×横3cm 直近3ヶ月間で撮影されたもの)を提出します。この際、郵送や代理人によることは不可であり、本人による提出が必要です。
必要書類を提出した後、その返し部分としての書類を受け取ります。この際、 「職業訓練受講給付金」を希望する方は、その申し込みに必要な書類も併せて受け取ります。
書類の提出・受領とともに、担当者から訓練に合格した後の手続きについての説明があります。

⑥ 訓練施設へ連絡する

◯ハローワークでの受付後速やかに訓練施設へ電話し、選考試験(面接等)受験のための連絡をしてください。 訓練施設側ではこの電話連絡を元に試験時程を組みます。
◯ハローワークで受け取った受講申込書(ハローワーク受付印のあるもの)を、選考試験日前に間に合うよう、訓練施設へ送付又は持参してください。

⑦ 訓練施設での選考試験を受験する

試験は書類(受講申込書)だけで行われる場合もありますが、ほとんどの場合は面接、もしくは面接+筆記試験があるので、ある程度の準備と対策が必要です。

⑧ 合格の手続きを実施する

◯合格の手続きを実施するため、ハローワークが指定した日時にハローワークに行き、「就職支援計画書」の交付を受けます。(訓練開始前日までに「就職支援計画書」の交付を受けないと訓練を受講することができません。)
この際、訓練施設から届いた「選考結果通知書(合格通知)」と写真(規格は前に同じ)を持参して下さい。
◯「職業訓練受講給付金」を希望する方は、その申し込みに必要な書類も併せて提出してください。

⑨ 訓練開始日の行動

いよいよ訓練の開始です。示された時間まで(少し早め)に登校し、「就職支援計画書」を提出します。職業訓練受講給付金を希望している方は職業訓練受講給付金支給申請書も併せて提出します。
また、訓練コースにより違いますが、パンフレットに示された書類を提出することもありますので注意してください。

 

以上が求職者支援訓練受講に至る流れですが、これは東京都の例を参考にしたものであり道府県により多少の違いがありますので、自分が居住する道府県のホームページを是非確認してください。また、居住地を管轄するハローワークに問い合わせください。

 

( 参 照 )
※1 「求職者支援制度とは」(https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000842497.pdf
※2 「平成3年度の訓練実施スケジュール」030708_R3_nenkanyotei.pdf (tokyo.lg.jp)
※3 「令和3年4月入校生の募集状況」(202104_oubojoukyou.pdf (tokyo.lg.jp)
※4 「ハロートレーニングの流れ」(0000169303_2.png (mhlw.go.jp)
※5 【求職者支援訓練】募集中・募集予定のコース情報|東京労働局 (mhlw.go.jp)