雇用環境の抜本的変化

「働き方改革」の推進

 もう少し雇用環境の変化を整理しておこう。前回省略したが、1918年6月に整備された「働き方改革」関連法も我も国の雇用環境を大きく変えた。
 「働き方改革」は、我が国が「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面していることから、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることを目的としていた。
 改革は、「長時間労働の是正」「多様な働き方の実現」「正規・非正規雇用労働者の格差解消」の3つの柱で成り立っており、企業には「子育て両立支援」「女性活躍支援」「高齢者雇用」「外国人・障害者雇用」などを要求する一方、就労者にとってはワークとライフのバランスをとって自分に合った仕事を選択できるようになった。

「エイジフリー社会」

 「働き方改革」や「高年齢者雇用安定法」改正のような近年の雇用環境の大幅な変化や高齢化の特性などを踏まえ、「65歳以上を一律に『高齢者』とみるのはもはや現実的でない。年齢による画一的な考え方を見直し、全ての世代が人々の希望に応じて意欲・能力を活かして活躍できる『エイジフリー社会』を目指すべき」(得丸英司著「『定年後』のつくりかた」より)との考えがある。
 つまり、高齢者雇用には健康、意欲、能力などの面で個人差が生じ、多様性があることから、一律の処遇ではなく、成果を重視する評価・報酬体系を構築すべきというのだ。裏を返せばこのことは、健康面はもちろん意欲や能力のない者は評価されず、最悪、仕事にありつけないことを意味するのである。

コロナ禍の影響とポストコロナ

 さて実際には、高齢者の雇用環境を劇的に変化させるような現象がコロナ禍によって引き起こされてしまったことも事実だった。有効求人倍率が急減し、高齢者雇用にブレーキがかかった。
 しかし、生産年齢層の減少のような構造には変化がないことから、ポストコロナで景気が元に戻れば、「生涯現役社会」実現に再び拍車がかかり、高齢者雇用は相当回復するものと推測される。ただ、全般の雇用情勢から、少数精鋭の「ジョブ型」(仕事ファースト」がより進展し、高齢者雇用も意欲や能力が優先されると覚悟する必要があろう。

50歳代からの意識改革

 得丸氏はさらに、長寿最先進国の日本は、先人が辿ったことがない “わだち” のない道、つまり、「自ら進路を決める『自走人生』を歩まなければならない」として、誰でも、どこでも、様々な形態で能力や経験を複合的に提供するためには、定年前になって慌てても身につかず、「50歳からの意識改革」を提唱している。早めに「定年後」を準備すべきだというのである。
 私達「退職自衛官の再就職を応援する会」のメンバーも小平学校や各方面隊の業務管理教育において、「50歳代からの『自分磨き』」をメインテーマに講話を実施している。
 最近、自衛官の場合は50歳からの準備では遅いと思っている。その理由は、自衛官として育った経験や能力を有する人材と世間が求める人材がだんだん乖離し始めていると考えるからである。それでは具体的に何を準備すればよいのだろうか、などについては次回以降詳しく触れることにしよう。本シリーズもいよいよ核心に迫る。請うご期待。