「人間としての成長」を目指そう

 前回、定年後の「人生計画」をつくろうと呼びかけた。現実は、数年内に定年を迎える隊員達はその必要性を理解しても、部隊の中核となって日々多忙な業務をこなしている若い隊員達は、自分の定年や定年後の人生まで考えている者は少ないことだろう。昨今のような情勢なればなおさらである。「ではどうすべきか」について幅広く考えてみよう。

日々の「意識の持ち方」

 そのスタートは、日々の「意識の持ち方」にあることは間違いないだろう。
 私達自衛官は、常日頃から「任務第一」「職務最優先」を当然として受け入れ、特段の疑問すら持たない。もちろん、長い自衛官人生の中には、特技の取得、厳しい教育訓練や実務、与えられた任務の完遂に向け全力投球しなければならない時がある。
 そのような経験の中にも、定年後の人生に役に立つ「考え方」「スキル」が山ほどあるし、少し適用範囲を広げれば、そのまま国家資格の取得につながる教育や特技も少なくない。
 その意味では、自衛隊内の教育が「職務に必要な資質・技能」に拘り過ぎ、民間人も理解できる「資格」との類似性の分析や資格取得に真剣に取り組まなかったことは残念である。
 しかし、大事なことは、自衛官一人ひとりが日々の業務や普段の生活において、定年後の自分の人生まで視野に入れて「人間としていかに成長するか」を意識し、あらゆる機会をその「糧」(砥石)にする “どん欲さ” を持つことにあると考える。
 だれにでも「一日24時間」は平等に与えられている。しかし、その時間の使い方、活かし方によってやがて大きな差が出てくる。人生の早い時分からそのことに気づき、意識し実践すれば、日々の小さな「学び」が積み重なり、自分自身の「成長」に繋がっていく。
 定年後の「人生計画」が現時点で明確でない人もぜひ、自身の日々の「成長」を意識し、努力してもらいたい。

「自衛官+アルファ」の成長

 最近、元自衛官の再々就職の面接に立ち会う機会があるが、合否は瞬時に決まるような気がしてならない。ちょっとした言葉やリアクションに現れる、その人の「人格」とか「生き様」などが “決めて” になるようだ。
 これらを一朝一夕に造り上げることは不可能であり、「人間としての成長」の結果そのものなのだと思う。そこに共通しているのはやはり「自衛官+アルファ」の要素である(図参照)。

 極端な例かも知れないが、「自衛官+アルファ」を目指し、蓄積することが定年後の人生、つまり「人生100年時代」を生き延びる方法なのである。
 この「アルファ」には「人格」などと言われるもの以外の要素もたくさんあるような気がする。それらの細部は次回取り上げよう。