「キャリア・プランニング」の勧め

自衛官は益々忙しくなる

 ウクライナ情勢は、我が国、中でも国家防衛の第一線に立つ自衛官にとって「対岸の火事」で済まされないのは明白だ。情勢も厳しくなり、即応性の維持、日々の教育訓練、眼前の職務をこなすため、益々多忙になるだろう。
 とは言え、これまで縷々述べてきたように、人生の後半に向けて必要な準備の手を抜くとその “ツケ” はやがて現実のものになる可能性がある。
 ではどうすればいいだろうか。答えは一つである。自衛官の職務を全うすることと将来に向けて準備することの両方に全力を尽くすしかない。
 それは決して出来ないことではないだろう。自衛隊の中にいると理解できないかも知れないが、自衛隊という組織においても個々の隊員の日常生活においても、発想を転換すれば、時間を作り出す余地はまだまだ残っている。
 私達「応援する会」は、昨年9月、「定年後も長い人生は続く」ことを視野に入れた人材育成を自衛隊の「文化」にすべきと提案したが、その実現は簡単ではないだろう。よって、しばらくは、個々の隊員が気づき、意識して努力するしかない。今回はその具体的要領を簡単に紹介しようと思う。

「ジョブ・カード」の活用

 「定年後の人生計画」の作成の必要性についてはすでに述べたが、定年までまだ時間がある自衛官にとっては、なかなかイメージ出来ないだろう。そのような自衛官こそ「キャリア・プランニング」の作成を勧めたい。
 「キャリア・プランニング」とは、自分の仕事(キャリア)のライフプランを考案することで、「将来の目標」とそれに向けた「計画」を考える一連の流れのことを指している。元々はアメリカで広まったものだが、我が国においても「終身雇用」が実質的に消えて働き方が多様化したことから、急速に普及しつつある。
 教育機関や企業においては関連セミナーの開催や専門家の育成をおこなっているが、自衛隊においても早急に全自衛官を対象に導入すべきと考える。紙面の都合上、その細部は省略するが、「ジョブ・カード」(左図)について少し触れておこう。
 「ジョブ・カード」とは、「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」の機能を担う目的で厚生労働省が提唱しているツールである。企業側にも歓迎され、求職側もこれを作成することによって、自分の強みや弱点、さらには将来必要な資格や職業訓練などが理解できる。
 「ジョブ・カード」作成支援ソフトをパソコンでインストールすれば、手書きでもエクセルでも作成できる。自衛隊内の支援態勢がなく難しいかもしれないが、興味のある方は、ぜひ試すことをお勧めしたい。自衛官ならではの活用の仕方があると考える。