「人間性」を育てよう

「人間性」が合否を左右する!

 本シリーズは、年明け以降、退職後に様々な人生を歩んでいる諸先輩の体験談から「現役時代にやったことが役に立った」「やっておけばよかった、後悔している」などの本音トークを取り上げることを計画している。
 「人生100年時代」を迎え、退職後の「人生の後半戦」のために、現役時代から心がけて準備しておくことなどについて15回にわたり縷々述べてきたが、その最終回として、これまで幾度か触れた「人間性」という最も難しいテーマで締めくくりたいと思う。
 「人格」「人柄」「人望力」なども同様の概念と考えられるこのテーマについて、筆者に語る資格があるかどうか悩むところであるが、実際の面接などに立ち会い、「人柄がいいので」と当人の「人間性」が決め手になったケースとか、逆に、言葉巧みに断られた理由を尋ねると「人間性」を受け入れてもらえなかったケースを知っている。
 何歳になっても、瞬時に出てしまい、隠すことが出来ないのが「人間性」であり、人生の後半を生き抜くための重要な「武器」なのである。

「人間性」を育てる4つの手段

日常の些細なことも育てる力に

 前回の最後に「人は、己の『人間性』を高めるために一生努力する存在」との言葉を紹介したが、書籍を紐解くと「人間性」を育てる手段は簡単ではないが、次の4つに要約されよう。
 第1は、「自己啓発」である。知性や感性を磨くために日々あらゆる努力を惜しまないことであろう。学びの材料は周りに溢れているのである。
 第2は、飛躍のチャンスをしっかりつかむことである。チャンスは平等に与えられている。今がチャンスと知ったら、死に物狂いで立ち向かうことが飛躍に繋がるのである。
 第3は、失敗や挫折を活かすことである。誰しも長い人生のうち何度も失敗し挫折もするだろう。失敗は教師であり、挫折はチャンスの裏返しなので、この経験を次の飛躍の種にすることだ。
 第4には、「人間の肥やし」の活用である。つまり、よい師友や愛読書・座右書を持つことである。
 「人間性」を育てることは、波瀾万丈の人生で「人間として成長すること」そのものであり、その成長は決して一直線ではないのも事実だろう。
 さて、日常の些細なことの中にも「人間性」を磨く “砥石” が敷き詰められている。少し補足しておこう。
 まず、(1)「約束を守る」、「相手の立場を尊重する」という思いやりがあれば約束を破ったりできないものである。(2)「陰口を言わない」、苦手な相手でもよい所を見つける努力が大事である。(3)「私利私欲に走らない」、損得抜きで行動することである。(4)「明るく笑顔でいる」、自分自身の笑顔が周りを笑顔にできるのである。
 これら些細なことも心して日々実践することが大切なのである。

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「聞き手上手」が信頼を広げる

 「人間性」とは、思いやりや気遣いの心、愛情など人間の内面のことを指す。本音を言えば、国防という国家や社会に対する愛情や思いやりの極地というべき精神を有する自衛官が今さら「人間性」を問われる筋合いのものではないだろう。
 一方、退職後にその「真価」が問われるのも現実である。「社会が悪い」などと決めつける前に、常に自省心をもって日々努力する中に、真の「人間性」が育つと断言したい。

 1回から16回の執筆担当は、「退職自衛官の再就職を応援する会」世話人の宗像久男(元東北方面総監)でした。