「少子高齢化社会」の問題点

日本人は〝絶滅危惧種〟か?

    「少子高齢化社会」の問題に入る前に、2060年頃からもっと先の長期的な人口推移を覗いてみよう。
    出生率を現在の1.34を中位にして、1.59から1.09の幅で推計すると、2100年頃の人口は、6485万人~3795万人になると推計されている。そこから先がさらに問題である。おおむね同様の出生率が続くと2180年に約2000万人になり、今から500年後の2500年頃には約44万人、3000年頃にはわずか約1000人にまで落ち込むと推計されるのだ。
    米国人戦略家のE・ルトワックは、産経新聞10月7日付の1面で「少子化は日本存亡の危機」として、移民の受け入れに適さない日本は「少子化対策に一刻の余裕がない」と断言している。
    放置すれば、やがて〝絶滅危惧種〟になる日本は、中国が3人子政策へ転換したように、なるべく近い将来、抜本的な対策を講じる必要があろう。

「社会の支え合い構造」が変化

    さて、グラフは「社会保障給付費の推移」であるが、戦後ゼロからスタートした社会保障給付費は50年間で約100倍になり、2021年には、約130兆円まで膨れ上がった。厚生労働省は2025年には約150兆円になると見積もっており、高齢者数の増加とともにその後しばらく増額されるのは必至だ。


    問題はこの給付費を誰が担っているかである。その内訳は、保険料、国庫、地方負担などで賄われ、いずれも主に生産年齢層が担っている。その生産年齢層はすでに減少傾向にあり、今後、益々減少するのである。
    我が国は、1961年に国民皆保険を開始した。その頃の高齢化率はわずか約6%だったが、今は約30%に近づくなど、明らかに「社会の支え合い構造」が変化しつつある。つまり、1965年頃は「胴上げ型」(65歳以上1人を生産年齢層が9.1人で支える)だったものが、2012年頃は「騎馬戦型」(1人を2.4人)になり、2050年頃には「肩車型」(1人を1.2人)になると予測されている。
    中でも、「賦課方式」(現役世代から徴収した保険料を高齢者に給付)を採用している年金の支給総額が大幅に減少し、その対策は年金の減額か受給開始年齢を引き上げるしか選択肢がない。最悪の場合、世界に誇る国民皆保険制度そのものの破綻の危機もあろう。
    ルトワックはまた、年金制度の崩壊のみならず、国家としての自信を喪失させ、最後は難破船のように木っ端みじんになると警告している。
    「少子高齢化社会」は、いまや国民ひとり一人に突き付けられた問題と認識する必要があろう。自衛官とて例外ではないのである。